No Name~竜巻の迷宮~

本編中の話
SIDE CLOUD


 

「俺、クラウドにはなりきれませんでした」
周囲の音は何も聞こえない

目の前は真っ暗だ

重くなっていく手足

靄がかかる思考

 

「クラウド....!」

 

あの子の悲痛な叫び声に、わずかに意識が覚醒する

 

放たれた名前──

 

それは、妙に大きく響いて、空っぽの胸に跳ね返って転がる。

ああ、これは俺のものじゃなかった

それでも、欲しくて欲しくて仕方なかった

 

あの子が名前を呼ぶ

それは、時に嬉しそうに

問いかけるように

探るように

その響きのすべてが、俺を安心させた

他の誰でもない、その声だけがたった一つの大切な光

でも、気付いてしまった

あの子に不安を与えていたのは

ニセモノだった...俺

 

もう、傍にはいられない

 

だって、あの子が探しているのは俺じゃない

求めているのは俺じゃない

逢いたいのは.....

 

 

「ティファさん......いつかどこかで本当のクラウド君に会えるといいですね」

 

 

剥がれていく偽りの仮面。擦れていく記憶は、すがるように叫ぶ

 

ティファ

 

名前を呼んで

俺の名前
俺…の…?

 

もう、二度と手に入らなくなった響き

最後の願いと共に

崩れ落ちていく心

 

ああ…そうか…

 

あの子の名前も

 

もう

 

呼べないな

 

 

fin.